【京都】宗教学者・山折哲雄さん講演 西行・親鸞・松尾芭蕉を比較し、日本人の宗教心探る

講演する山折哲雄さん=京都市北区小山上総町の大谷大
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 宗教学者山折哲雄さん(88)が「西行芭蕉に開かれる親鸞 日本人の宗教心」と題して、京都市北区小山上総町の大谷大で講演した。山折さんは平安末期~鎌倉初期の歌僧・西行、鎌倉初期の僧で浄土真宗の宗祖・親鸞江戸前期の俳人松尾芭蕉を比較。「3人には『美と信仰の二刀流』という共通点があり、その二刀流という考え方が日本人の信仰心のベースをなしているのではないか」と指摘した。

 山折さんは、西行親鸞芭蕉らが人生の後半、肩にのしかかる責務、思想、人間関係などから解放され、旅に出て歌や俳句への傾倒を深めたことを紹介した「『身軽』の哲学」(新潮選書)を5月に出した。講演会はこの本と関連が深く、同月29日に開かれた。

 講演で山折さんは、自らに重くのしかかったものが「親鸞全集や親鸞の思想だった」と話した。「親鸞全集を若い友人に譲渡した時、不思議な解放感がこみあげた」という。

 続いて西行親鸞芭蕉の共通点に言及。「西行は出家したが歌との縁は切らず、『半僧半俗』の人として、美と信仰の世界に生きた。親鸞は京都から越後に流され、流浪の旅の中で『非僧非俗』として民衆と出会い、思想を『和讃(わさん)』という歌の形に直した。芭蕉俳諧(はいかい)紀行『野ざらし紀行』で自分のことを『僧に似て塵(ちり)あり』『俗に似て髪なし』と書いた。俳句という美の信徒であり、僧へのあこがれも持っていた」と述べた。

 さらに「西行親鸞芭蕉を時代や分野だけで区分すると、3人に共通する心の世界が分からなくなってしまう。3人は美と信仰の二刀流だったという視点が重要ではないか」と説いた。(大村治郎)

朝日新聞デジタル 2019年6月6日11時39分
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