【長野】教職員わいせつ行為 懲戒処分公表範囲縮小 再発防止に疑問の声 長野県教委

教職員わいせつ行為 懲戒処分公表範囲縮小 再発防止に疑問の声 長野県教委
毎日新聞 2019年6月10日 09時13分(最終更新 6月10日 09時13分)
https://mainichi.jp/articles/20190610/k00/00m/040/009000c

 長野県教育委員会は4月、教職員らによる児童・生徒へのわいせつ行為の懲戒処分について、
公表の範囲を狭めるガイドラインの運用方針を決めた。

これまで原則公表としていた学校の地区や職種は「被害者の特定につながる恐れがある場合は非公表」とし、
被害者の性別や被害の具体的内容なども非公表だ。

県教委は「2次被害を防ぐため」「子どもの利益権利を保護するため」と主張するが、
相次ぐわいせつ行為の防止につながるのか、識者は疑問の声を上げる。

 「再発防止という観点でふさわしい制度になったか、議論は深まったと思うか」「社会的に重大な情報かもしれなくても(情報が少なくて)価値判断ができない」。
4月19日。記者会見した原山隆一・県教育長に報道陣の質問が相次いだ。

 この日、生徒2人にわいせつな行為をしたとして県立高校の20代男性実習助手を懲戒免職処分にした、という新方針を早速適用した事案が発表された。
記者会見では県教委と報道陣は押し問答になったが「県立校に勤務する20代の実習助手は県で15人しかいない」として、「どの地域か」など
被害者が特定される可能性が低い情報も公表されなかった。

 被害生徒の登校状況は「登校していない」という表現にとどまり、「学校に行きたいけど登校できていないかもしれないのに『自主的に登校していない』と
受け止められてしまう表現」と指摘されても、県教委は「転校、不登校、退学などいろいろな状況を客観的に見た時、『登校していない』が一番分かりやすい言い方」と不明瞭な説明に終始した。

 被害生徒の性別については「被害者と加害者が同性の場合など、公表すると興味本位に取り上げられる可能性がある」として非公表にし、
原山教育長は「現実的に偏見を受ける可能性がある」と後ろ向きな姿勢だった。

 近隣県では、新潟県、愛知県、山梨県は原則学校名を公表。3県に加え、岐阜県静岡県、埼玉県は、被害者の意向や特定できない範囲を念頭に公表範囲を決めているが、
基本的には被害児童・生徒の性別を公表。具体的な行為も「なるべく説明するようにしている」県が多かった。

 埼玉県教委は5月、キスをしたり、服の上から体を触ったりしたなどとして勤務校の女子生徒にわいせつな行為をしたとして、
同県西部の公立中学校の男性教諭(28)を懲戒免職処分にした。
ホームページにも公表されている発表文には、生徒の当時の学年やわいせつな行為の具体的内容が詳しく記されている。
担当者は「事案によるが、監督責任がある行政の透明性を高めるために、できるだけ具体的に出せる範囲は出している」と話す。

 NPO「スクール・セクシュアル・ハラスメント防止全国ネットワーク」(大阪府守口市)の亀井明子代表は
「学校が批判されることを恐れたり、校長の責任が追及されたりするのを避けるための隠れみのと感じる」と批判する。
「学校でできることを忘れがち。特定されないようフォローして、子どもが学校に来やすいように態勢を作ることが大事」といい
「少なくとも校名までをきちんと公表した上で、子どもたちや保護者、地域に謝罪するとともに、防止策をきちんと立てるべきだ。公表すれば終わりではない」と指摘する。

 原山教育長は、5月23日の記者会見で「個別の事案を特定されない形で情報を公表できないか」を6月に検討するとしている。