【朝鮮日報/社説】 華為排除、企業に独自対応求める韓国政府の存在意義 [06/10]

世界の覇権争いで互いに「こっちの味方になれ」と圧力をかけてくる米国と中国に対し、韓国大統領府は「企業が自律的に決定すべき事案だ」との見解を明らかにした。米国が要求する「反ファーウェイ(華為技術Huawei)」戦線に加わるのか、それとも拒否するか、個々の企業に自分で判断しろというのだ。

大統領府は「(ファーウェイの機器が使われている)5G(第5世代移動通信システム)は韓国国内の軍事・安全保障通信網と確実に分離されている」「韓米軍事・安全保障分野への影響は全くない」とも言った。米国が懸念するファーウェイのセキュリティー問題に該当する事項はないという意味だ。

ファーウェイ問題は単なる技術競争・貿易紛争ではない。米国は中国の台頭をこれ以上傍観できないと判断、中国を抑制するために具体的な行動を開始したのだ。米中が「新冷戦」とも言える世界の覇権争いに突き進んでいる中、こうした事態に個々の韓国企業はどう対処すべきなのか。

重大な国家懸案で韓国政府が何の対策もなく企業に責任転嫁するなら、何のために政府があるのかと問いたくなる。

政府の認識とは違い、米中の圧力はますます露骨になっている。「ファーウェイ余波」は既に目前に迫っている。中国政府は先週、サムスンやSKハイニックスなどを含む世界的な情報技術(IT)企業を呼び、米国の対中圧力に協力しないよう呼びかけたという。

中国は、米国側に加担すれば「ひどい結果に直面する」「懲らしめを受ける」という表現まで使って韓国企業に対し実質的な脅迫をした。

米国も駐韓大使を通じてファーウェイとの取引を終了せよというメッセージを公に発信している。米ホワイトハウスは「同盟国のネットワークが脆弱(ぜいじゃく)なら、(同盟国との)情報共有問題を見直す必要がある」とも言った。米中のはざまで選択を迫られているのだ。

選択を迫られている企業は、「血の気が引くような状況だ」という表情で政府ばかり見つめている。韓国企業は少し前、中国による経済報復で「お手上げ状態」となった「THAAD(終末高高度防衛ミサイル)の悪夢」を経験している。

今回はそうした火の粉が最小限になるよう、政府に外交力を発揮してほしいと訴えている。そうした各企業に政府が「民間の領域だから民間企業が自分で考えて何とかしろ」と言うなら、政府が存在する意味がないことになる。

韓国政府が身動きできる幅は、既に米国を味方している日本・ニュージーランド・オーストラリアや、中国の味方をしているロシア・東南アジアなどに比べてはるかに狭いことを知らない人はいない。

米国の要求を拒めば同盟国間の信頼が崩れて安保に穴があく恐れがあるし、逆ならば最大の貿易相手国である中国から再び経済報復される恐れがある。

だからと言って、お手上げ状態のまま流されるだけ流されるのも正解ではない。表向きには「戦略的なあいまいさ」に見えても、水面下では必死の外交努力が行われていなければならないが、そうした様子もない。

ファーウェイ戦争は氷山の一角に過ぎず、米中間の紛争は今後、長きにわたりさまざまな形で韓国につらい選択を強要するだろう。臨機応変ではなく、原則を立てて対応することが被害を最小限に抑える道だ。

科学技術部(省に相当)や外交部ではなく、政府の外交・安保・経済力を総動員して総合的な国家戦略の次元で取り組まなければならない。これこそ今、韓国の目の前にある最も大きく深刻な懸案だ。


2019/06/10 11:01
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