【交通】事故死した父の走行ルートが違う!青信号主張の46女性、実は信号無視で逮捕 誤った捜査と報道を覆した家族の執念

事故死した父の走行ルートが違う! 誤った捜査と報道を覆した家族の執念
柳原三佳 | ノンフィクション作家・ジャーナリスト
6/3(月) 6:08

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 中でもツイッターには3万1000件のリツイートなど、大きな反響があり、実際に多数の目撃情報が寄せられたそうです。

 そして、事故から9日後の1月31日、事件は大きく動きました。
 警察も改めて捜査を行った結果、仲澤さん側の主張を裏付ける証拠を得たとして、当初の発表から一転、乗用車を運転していた女性を「過失運転致死容疑」で逮捕したのです。

 翌日の新聞には、事故直後とは全く異なる以下の記事が掲載されました。 

【過失致死疑いで46歳の女を逮捕 三島の死亡事故】
 
 三島市市道交差点で乗用車とミニバイクが衝突した死亡事故で、三島署は三十一日、自動車運転処罰法違反(過失致死)の疑いで、乗用車を運転していた沼津市大岡、会社員渡辺さつき容疑者(46)を逮捕した。署は認否を明らかにしていない。逮捕容疑では、一月二十二日午後六時ごろ、三島市萩の市道交差点を乗用車で直進した際、右から来た三島市徳倉、会社員中沢勝美さん(50)のミニバイクに衝突、仲沢さんを死亡させたとされる。署によると、渡辺容疑者は当初「青信号だった」と供述していたが、その後の調べで赤信号だったことが分かり、逮捕した。(『中日新聞社』2019.2.01)

 杏梨さんは語ります。
「父が右折ではなかったこと、そして加害者側の信号無視が明らかになり、本当によかったと思っています。刑事裁判が始まるまでは、決め手となった証拠について公開することはできないのですが、もし目撃者や客観的な証拠が見つからなければ、父が加害者扱いされたまま終わっていたでしょう。このような事故が、ただの過失致死としてしか扱われないのはとても悔しいです」

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 私が取材した交通事故の中にも、事故に遭い意識不明の間に、自分が全く通ったことのない路地から飛び出したことにされたケース(■バイクにもドライブレコーダー装着を! 意識不明の間に「加害者」にされる恐怖)、亡くなったライダーの側の信号の色が、検察に上がった途端、青から赤に変わったケース(■交通事故で息子を失った母が「池袋・母子死亡事故」に寄せる思い)など、同様の事件が多々ありました。

 加害者の自己防衛的な供述が独り歩きし、客観的な証拠がない場合は、真実を明らかにすることは難しいのが現状です。
 被害者にしてみれば、まさに「死人に口なし」冤罪といえるでしょう。

 警察やメディアは、入念な捜査をする前に断定的な発表や報道を行うことは、厳に慎むべきです。

 仲澤さんの家族は今、このような事故で遺族や被害者が泣き寝入りしないためにも、「真実を供述せず、被害者に過失を押し付ける行為をした容疑者」に対して厳罰を求める署名活動などを展開しています。

 杏梨さんは訴えます。

「交通事故の被害者の中には、私たちと同じように事故で大事な方を亡くされ、死人に口なしの捜査で真実に辿りつけぬまま無念の結果を迎えた方が沢山いらっしゃると思います。私たちは父の死を無駄にせず、先例となるべく、事故を起こしてしまった加害者の、事故後の行為の重さを多くの人に伝え、知ってもらいたいと思っています」
https://news.yahoo.co.jp/byline/yanagiharamika/20190603-00128353/