【池田小事件】宅間守の女性蔑視と大量殺人を生んだ「男らしさ」の呪縛

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■唯一の特徴は「男性」

 犯罪者のプロファイルの唯一の特徴的なことは、それが男性だということです。犯罪者は男性が圧倒的に多いことを、人は半ば当然のことのように知っています。新聞やテレビで報道される殺人、強盗、詐欺、窃盗の多くの容疑者は男性です。統計を見ると、その事実はいっそう明らかになります。刑法犯検挙人員の女性の割合は、1975(昭和50)年以降は、ずっと全体の2割前後となっています。

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■「むしゃくしゃする」の裏の感情

 宅間守についての最初の新聞報道を読んだとき、まず「ジェンダーと犯罪」という言葉が私の意識に浮かびました。刺し殺した子ども8人のうち7人までが少女だったこと、さらに彼が妻たちに暴力を振るったドメスティック・バイオレンス(DV)の加害者であること、池田小学校事件の動機として、暴力を振るいストーカー行為をし続けた相手である元妻を殺す代わりにやったと証言していたことも、いっそうこの事件の本質は「精神障害者と犯罪」ではなく、「ジェンダーと犯罪」なのだと思わせる要因でした。

 公判の被告人質問への返答で、宅間被告は、聞いている者が戦慄するほどに根深い女性蔑視を何度も口にしました。

 また、彼はたびたび母親への恨みも口にしました。まるで、母親の知性のなさが自分の犯行の原因とでも言いたげでした。

 その母に父が暴力を振るうのを見て、彼は育ちました。幼少の子どもにとってそれは恐怖や悲しみの感情が凍結してしまうほどのトラウマをもたらす体験です。彼自身も厳しい体罰を父親からしばしば受け、恐れ、不安、辛さ、悲しさをためこんでいました。

 その苦しい心理状態を宅間は公判でしばしば「むしゃくしゃする」と説明しました。

表現を許されなかった怒りや悲しみ、とりわけ本人も認めたくない不安や屈辱や恥の感情は心の中の異物として、行き場を失い子どもの身体の内をさまよい、自我形成に、人間関係の持ち方に深刻な影響を及ぼします。

 「むしゃくしゃする」と、小学生の宅間は自分より小さな子どもにつばを吐きかけいじめ、「むしゃくしゃする」と、中学生の宅間は女子を後ろから襲ってレイプし、「むしゃくしゃする」と、駐車している車のタイヤを片端からパンクさせ、「むしゃくしゃする」と、妻を殴ったのです。

 「昔から生きてんのがやっと。しんどかった。100人中95人まではこういう気持ちはわかってもらえないだろう。むしゃくしゃするとどうしていいかわからなくなり、女を襲ったり、車をパンクさせたりして、ごまかして不快感を発散させる方法を身につけた」

 中でも女子への攻撃は一貫していました。小学生の頃は、女子生徒の胸や尻をさわる。いじめや唾吐き。中学では女子の弁当に精液をかける。10代の頃から始まった数知れない女性への暴行、レイプ。元妻たちへの執拗なDV暴力。母を廃人同様にした暴力。女子高校生や空港の「グランドホステス」など女性を攻撃対象にした無差別殺人の想像。

 そして3番目の妻への「むしゃくしゃする」気持ちの肥大を止めようがなくなり、大量殺人、池田小襲撃の行動となりました。

■男らしさが否認する怖さや悲しみの感情

 怖い、寂しい、自分に自信がないなどの気持ちを男子が口にすることを「女々しい」と嫌う男らしさの価値観は、体罰を受けたり、いじめられたりすることで生じる錯綜する感情を否認し、抑圧します。「男だったら泣き言を言うな」「女々しい奴」といった慣用句に表される男らしさを美化する社会の通念を、武士の血筋であることを誇りに思い、木刀で息子に懲罰を加えていた父親が体現していたことは想像に難くありません。

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■遺族に謝罪できない理由

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 宅間守の手記の便箋の余白には、いくつもの男性性器のイラストが書かれています。刑務所の中で手記を書きながらも彼は性衝動をエネルギー源にして、言葉による他者攻撃を展開したようです。

 性暴力とは、加害者の抑えきれない生理的性衝動が引き起こす行動ではなく、他者を支配することへの心理的欲求行動です。誰かを貶めて自分の有力感を得たい、相手に強いという印象を与え、抑うつ気分を払拭したい、自分自身への怒りを発散させたい、そのために彼らは性器を武器として相手を力でコントロールするのです。(続きはソース)

6/8(土) 11:00配信
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